2012年9月6日木曜日

高エネルギー加速器研究機構に行ってきた。(前編)

私の通っている日本工業大学には「物理体感工房」と言う授業がありまして、端的に言うと、「作りたいものを学校のお金で作って単位がもらえる」という、なんという私得な授業です。
そこで、私は以前挫折した加速器の模型の製作をする事にしたのです。

とりあえず、高エネルギー加速器研究機構(以降KEK)のKEKB加速器の模型を作る予定です。
加速器の性能やビーム強度、知名度的にはCERNのLHCの方が良いのですが、あれは軌道がほぼ真円なので、見てくれ的につまらないのです。
航空写真にSERNのLHC他の加速器の軌道イメージを合成したもの。
KEKB加速器は角の丸い正方形をしていて、入射のための線形加速器が伸びてきています。
(真円に比べれば)複雑な形状の方がウケがいいような気がして。数少ない国産加速器ですし。特に、線形加速器から円形加速器への入射部・衝突部は作り甲斐がありそうです。
KEKB加速器のイメージ

模型と言っても、見た目の模型ではなく、「加速器と言う装置」の模型になります。
はい。
動くんです。
なので、見た目の忠実度は若干(というか、かなり)下がります。KEKB加速器はあくまでも「軌道形状のサンプル」となります。

実際のKEKB加速器の主な相違点は
加速対象、加速方法、当然ですが大きさになります。
KEKB加速器では、電子・陽電子を加速します。対して、私の作ろうとしている模型は直径1cmほどの鉄球を加速します。この手の加速器の模型ではよく使われます。KEKにもこのタイプの模型がありました。
加速方法は、KEKB加速器では電場によって、具体的にはマイクロ波によって加速されます。模型では磁場によって、具体的には電磁石の磁力を用います。
大きさは、当然ですが原寸大ではありません。そんなもの作ったら、立派な兵器になります。
実物は円形加速器が一周約3kmあり、線形加速器が600mほどあります。
実は、大きさはまだ決めていません。電磁石の加速性能が未知数なのと、電源装置の容量が未決定と言うのが主な原因です。出来る限り小さくするつもりですが、電磁石だけが不自然な大きさにならない程度に全体の大きさを決定する予定です。



…だいぶ話がそれましたね。始めからそれていた気もしますが…まぁ、KEKに行く目的は分かっていただいたかと思います。
実物を見ない事には始められない、写真だけでは分からない、ついでに他も見てこよう、つくばエクスプレスに乗りたい、そんな感じで、KEKに行ってきました。
敷地内随所に設置されていたマップ。巡回バス路線図も兼ねている。

KEK計算科学センター(N03)及び2号館(K02)前交差点から撮影。奥のガラス張りの建物は3号館(K03)
…どうせなら、移動中も含めて撮影しておけば良かったですね。
おっと、言い忘れていましたが、9月2日はKEKの一般公開の日でして、それで行ってきました。
場所はつくばエクスプレスのつくば駅が最寄り駅になります。
…北千住から片道1000円…馬鹿になりません。
当日はつくばセンターから無料バスがでていて、それに乗り約20分。施設の一つ、計算科学センター(N03)の前に着きます。
つくばセンターのバス乗り場では、折り畳まれた地図とスタンプラリー(!?)の用紙とアンケート用紙が手渡されます。地図はあの有名なミウラ折り。広がりやすいのは良いですが、折り畳んで歩きながら読むという使い方が出来ないのが欠点です。

とりあえずは、バス降り場目の前の計算科学センター(N03)に寄ってみました。
名前の通り、コンピュータによる計算や、ネットワーク管理、CG技術等を研究している施設です。今回は計算機室というスーパーコンピュータが置いてある部屋が公開されていました。
計算機室は二つあり、最初に入った割とまだ空きがある部屋と、スパコンで埋まった部屋があります。どちらも、空調で20℃程度に保たれています。
最初に入った計算機室に設置してあるスパコンの内の二つ。
とにかくデカい。
別にある冷却装置が内部を冷却しているので、ファンの排気口等はない。
上のスパコンの同型を公開用に蓋を開けたもの。データ通信用ケーブルが半端ない。
黒いケーブルが冷媒が流れていると思しきもの。
二番目に入ったスパコンと記録装置で埋まっている部屋。
何と言っても狭い。
スパコンの裏側。メインメモリだけでテラバイトクラスと言う代物である。
こちらは空冷式になっていて、金網からファンの排気がでてくる。
結構熱い
しかし、それ以上に空調が効いているので、問題ではない。
 床下に張り巡らされた通信ケーブル。
数百本はあるだろうか。
解説係が「スパゲッティ」と表現したのもうなずける。
データ整理及び一時保存ユニット。
データは一旦、ここのHDDに保存される。
しばらく変更のないデータは、次の記録ユニットに転送される。
真正面のは空調設備。
ここでは、7TBもの容量の磁気テープにデータを保存している。
左右にそびえ立っているのがテープのカセットが収納されているラックである。
中央の赤く光っているのが、全自動で磁気テープを交換するためのロボットである。
前後に延びるレールと上下に自在に延び縮みするロボットが縦横無尽に動き回り、あっという間にテープを交換する。
先ほどの一時保存用HDDを含めると、総記憶容量はペタバイトクラスに達する。
いろいろな磁気テープ。
誰しも見た事あるようなものから、映画にでてきそうなものまである。
スパコンのマザーボード1。
中央に刺さっている基板が一つのCPUである。
スパコンのマザーボード2。
橙色の部分にCPUが入る。
黒い部分はメモリスロットである。膨大な数のメモリが入る。

計算科学センターで公開されているのはこれだけ。
とりあえず、巡回バス(赤コース)に乗って、加速器の一部、電子陽電子入射器(H01)に向かう。

…思ったより長くなりそうなので、予定を急遽変更し、二本立てにします。
次回はいよいよ、本命の加速器にお目にかかれると思いきや…?
後編をお楽しみに。